シャーロック・ホームズシリーズ

Otherusesシリーズその他の用法シャーロック・ホームズ 曖昧さ回避

Portal文学

ファイルSherlock holmes pipe hatjpgthumb250pxシャーロック・ホームズ帽子パイプと虫メガネ

シャーロック・ホームズシリーズ(lang-en-shortSherlock Holmes)は、小説家アーサー・コナン・ドイルの作品で、シャーロック・ホームズと、友人で書き手のジョン・H・ワトスンの織り成す冒険小説の要素を含む推理小説である。

1887年から1927年にかけて、60編(長編4、短編56)が発表された。長編として発表した第1作、第2作は人気が出なかったが、イギリスの月刊小説誌ストランド・マガジンに依頼され、短編を連載したところ大変な人気となった。それ以降の作品はすべて同誌に発表された。

物語基本的事件当事者、あるいは捜査に行き詰まった警察がホームズに助けを求め訪ねて来ることで始まる。ホームズが現場調査に行き、警察の見過ごした証拠発見し推理を働かせて事件の謎を解きrefなお、ホームズ自ら待ち伏せ、追跡等で犯人をつかまえることも多い。ref、物語は終わる。ほとんどの作品がワトスンによる事件記録、という形で書かれている。変人探偵と常識人をコンビにして相棒を物語の書き手とするスタイルは、史上初の推理小説といわれるモルグ街の殺人(エドガー・アラン・ポー、1841年)を踏襲している。

作品リスト

正典外典

コナン・ドイルが書いた60の長短編は、熱狂的なファン(シャーロキアン)から聖書になぞらえて正典 Canon聖典古年代記(サーガ)などと呼ばれるrefベアリング・グールド二人の医師一人の探偵小池滋訳詳注版シャーロック・ホームズ全集1小池滋監訳、ちくま文庫1997年、18-19頁refref古年代記への言及はない - 栗原郁夫外典(経外典・偽典アポクリファ)シャーロック・ホームズ大事典小林司・東山あかね編、東京堂出版2001年、156-157頁refref古年代記への言及はない - 田中喜芳シャーロッキアンの優雅な週末 ホームズ学はやめられない中央公論社1998年、7頁refref正典のみ言及 - コナン・ドイルドイル傑作選I ミステリー篇北原尚彦・西崎憲編、翔泳社1999年、8頁、365頁ref。このCanonは、コナン・ドイル Conan Doyleのアナグラムでもあるrefベアリング・グールド二人の医師と一人の探偵小池滋訳詳注版シャーロック・ホームズ全集1小池滋監訳、ちくま文庫、1997年、19頁ref。正典に対し、聖書同様に外典 Apocrypha経外典偽典などと呼ばれる作品群があるref栗原郁夫外典(経外典・偽典アポクリファ)シャーロック・ホームズ大事典小林司・東山あかね編、東京堂出版、2001年、156-157頁ref。Apocryphaについては定義に揺れがあり、ホームズに関連したパロディやパスティーシュの全てを外典と呼ぶこともあれば、ドイル自身によるホームズのパロディなどに限定して経外典とする説refジャック・トレイシーのアンソロジーシャーロックホームズ出版された経外典による - 栗原郁夫外典(経外典・偽典アポクリファ)シャーロック・ホームズ大事典小林司・東山あかね編、東京堂出版、2001年、156-157頁ref、聖典で言及されたものの執筆されていない事件の記録を偽典とする説refベアリング・グールド二人の医師と一人の探偵小池滋訳詳注版シャーロック・ホームズ全集1小池滋監訳、ちくま文庫、1997年、86頁ref、外典をドイルの執筆した戯曲(芝居の台本)ドイル自身によるパロディホームズが脇役で登場する作品の三種類に大別する説refコナン・ドイルドイル傑作選I ミステリー篇北原尚彦・西崎憲編、翔泳社、1999年、8頁refなどがある。

シリーズのほとんどの作品がワトスンの一人称で記述されているが、最後挨拶マザリン宝石三人称白面兵士ライオンのたてがみはホームズの一人称で記述されている。グロリア・スコット号事件マスグレーヴ家儀式は、ホームズがワトスンと知り合う以前の体験を語って聞かせるという体裁をとり、実質ホームズの一人称での記述になっている。また緋色研究恐怖の谷の後半に、かなり長く三人称で過去の出来事を語った部分がある。

正典

以下の邦題は新潮文庫版のものである。TV化された作品など、異なる邦題は多数存在し、原典の直訳とは全く違う内容に即した題名が充てられているものもある。かっこ内は、それらのうち大きく異なっているものである。

長編
A Study in Scarlet - 緋色の研究(緋色の習作)

The Sign of Four - 四つの署名(四つのサイン)

The Hound of the Baskervilles - バスカヴィル家の犬(バスカービルの魔犬)

The Valley of Fear - 恐怖の谷
短編集

The Adventures of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの冒険

A Scandal in Bohemia - ボヘミアの醜聞(醜聞にスキャンダルルビが振られる場合がある)

The Red-Headed League - 赤毛組合(赤毛連盟、赤毛クラブ)

A Case Of Identity - 花婿失踪事件(花婿の正体)

The Boscombe Valley Mystery - ボスコム渓谷の惨劇(ボスコム谷の惨劇)

The Five Orange Pips - オレンジの種五つ

The Man with the Twisted Lip - 唇のねじれた男(もう一つの顔)

The Adventure of the Blue Carbuncle - 青い紅玉(青いガーネット、青いルビー)

The Adventure of the Speckled Band - まだらの紐
The Adventure of the Engineers Thumb - 技師の親指

The Adventure of the Noble Bachelor - 独身の貴族(花嫁失踪事件)

The Adventure of the Beryl Coronet - 緑柱石の宝冠

The Adventure of the Copper Beeches - ぶな屋敷(ぶなの木立、ぶなの木屋敷の怪)

The Memoirs of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの思い出(シャーロック・ホームズの回想)

Silver Blaze - 白銀号事件(銀星号事件、名馬シルヴァー・ブレイズ)

The Cardboard Box - ボール箱ref namecardboard boxドイル生前の版とアメリカ版とではシャーロック・ホームズ最後の挨拶に収録されているが、近年のイギリス版ではシャーロック・ホームズの思い出に収録されている。ref

The Yellow Face - 黄色い顔

The Stockbrokers Clerk - 株式仲買店員

The Gloria Scott - グロリア・スコット号事件
The Musgrave Ritual - マスグレーヴ家の儀式

The Reigate Squirerefストランド・マガジンでの題名。Squireの部分が、シャーロック・ホームズの思い出収録時にはSquires、アメリカ版ではPuzzleと改題された。ref - ライゲートの大地主

The Crooked Man - 背中の曲がった男(かたわ男)

The Resident Patient - 入院患者(寄留患者)
The Greek Interpreter - ギリシャ語通訳

The Naval Treaty - 海軍条約文書事件

The Final Problem - 最後の事件

The Return of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの帰還(シャーロック・ホームズの生還、シャーロック・ホームズの復活、シャーロック・ホームズ帰る)

The Adventure of the Empty House - 空き家の冒険

The Adventure of the Norwood Builder - ノーウッドの建築業者

The Adventure of the Dancing Men - 踊る人形

The Adventure of the Solitary Cyclist - 孤独な自転車乗り(美しき自転車乗り)

The Adventure of the Priory School - プライオリ学校
The Adventure of Black Peter - ブラック・ピーター

The Adventure of Charles Augustus Milverton - 犯人は二人(チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン、恐喝王ミルヴァートン、毒ヘビ紳士)

The Adventure of the Six Napoleons - 六つのナポレオン(六つのナポレオン像)

The Adventure of the Three Students - 三人の学生
The Adventure of the Golden Pince-Nez - 金縁の鼻眼鏡

The Adventure of the Missing Three-Quarter - スリークウォーター失踪

The Adventure of the Abbey Grange - 僧坊荘園(アベイ農場、アベ荘園、アビィ農園、修道院屋敷)

The Adventure of the Second Stain - 第二の汚点(第二のしみ)

His Last Bow - シャーロック・ホームズ最後の挨拶

The Adventure of Wisteria Lodge - ウィスタリア荘(ウィステリア荘、藤荘)

The Cardboard Box - ボール箱ref namecardboard box
The Adventure of the Red Circle - 赤い輪

The Adventure of the Bruce-Pardington Plans - ブルースパーティントン設計書

The Adventure of the Dying Detective - 瀕死の探偵

The Disappearance of Lady Francis Carfax - フランシス・カーファックス姫の失踪

The Adventure of the Devils Foot - 悪魔の足
His Last Bow - 最後の挨拶

The Case-Book of Sherlock Holmes - シャーロック・ホームズの事件簿

The Adventure of the Mazarin Stone - マザリンの宝石

The Problem of Thor Bridge ソア橋(ソア橋のなぞ)

The Adventure of the Creeping Man - 這う男(這う人)

The Adventure of the Sussex Vampire - サセックスの吸血鬼

The Adventure of the Three Garridebs - 三人ガリデブ

The Adventure of the Illustrious Client - 高名な依頼人

The Adventure of the Three Gables - 三破風館(スリー・ゲイブルズ)

The Adventure of the Blanched Soldier - 白面の兵士

The Adventure of the Lions Mane - ライオンのたてがみ(獅子のたてがみ)

The Adventure of the Retired Colourman - 隠居絵具師
The Adventure of the Veiled Lodger - 覆面の下宿人
The Adventure of Shoscombe Old Place - ショスコム荘
外典

ホームズの名前は出てこないが、彼らしき人物が登場するドイル作品

The Lost Special - 消えた臨時列車(消えた臨急)

The Man with the Watches - 時計だらけの男
ドイル自身によるホームズもののパロディ
The Field Bazaar - 競技場バザー

How Watson Learned the Trick - ワトスンの推理法修業

ドイルの手による戯曲

The Crown Diamond - 王冠のダイヤモンド(短編マザリンの宝石の原型)

The Speckled Band - まだらの紐外典 戯曲版まだらの紐とストーナー事件まだらの紐(短編まだらの紐の戯曲化)

The Stonor Case - まだらの紐外典 戯曲版まだらの紐とストーナー事件ストーナー事件(上記戯曲まだらの紐の第一稿)

Angels Of Darkness - 暗黒の天使たちref緋色の研究の後半部分を基にする戯曲。ドイルの遺族が公表を拒否してきた作品で、出版が認められていない - コナン・ドイルドイル傑作選I ミステリー篇北原尚彦・西崎憲編、翔泳社、1999年、369頁ref

ドイルの手によらないホームズ作品

Arsene Lupin contre Herlock Sholms - ルパン対ホームズ(モーリス・ルブラン 作)

The Case of the Man Who Was Wanted - 指名手配の男(ドイルの未発表作品かと思われたが贋作)

The House of Silk - 絹の家(アンソニー・ホロヴィッツ作、コナン・ドイル財団公認のホームズシリーズ続編)

Moriarty - モリアーティ(アンソニー・ホロヴィッツ作、公認続編第2弾)

主な登場人物
シャーロック・ホームズ

ジョン・H・ワトスン

ハドスン夫人
マイクロフト・ホームズ
メアリー・モースタン
レストレード警部
トバイアス・グレグスングレグスン警部
アセルニー・ジョーンズ警部
ジェームズ・モリアーティ教授
アイリーン・アドラー

日本での出版

前史

日本は英語圏以外で、もっとも早くホームズものが紹介された国のひとつである。

明治27年(1894年)の雑誌日本人1月号には既に乞食道楽の訳題で唇の曲がった男が紹介されている。訳者名が記載されておらぬが、これが現在確認できる範囲で一番古い紹介である。次いで明治31年(1898年)9月7日から17日に徳富蘆花の翻案で秘密条約が連載されている。これは海軍条約の紹介である。

中編の紹介は明治32年(1899年)には血染の壁の邦題で、毎日新聞に緋色の研究が連載されている。ホームズは本間、ワトスンは和田と日本人にされ、舞台ベルリンに変えられた(翻訳者は無名氏とされ、誰であったかは不詳)。

同じ年には水田南陽が冒険のいくつかを中央新聞で不思議の探偵の総題で紹介翻訳している。外遊した際にホームズものの人気を聞きつけ、帰国後にこれを訳したという。冒険の出版が1892年なので、わずか7年で持ち込まれたことになる。まだらの紐を毒蛇の秘密としてしまうなど、題名でネタを割ってしまっている例もあるが、赤毛組合を禿頭倶楽部とした当時の日本人に馴染みやすく改変を行った例もある。明治末期(1907年)辺りから続々と作品が刊行され始めた。

明治期の紹介は、当時の日本人多くには英米人名地名あるいは文物になじみがなかったので、翻訳というよりも翻案あるいは再話というべきものが多い。舞台をイギリスから日本に人名を堀田、和田など解り易い人名に置き換えるなどである。

また、英語教材としても扱われており、明治40年4月には、佐川春水訳註銀行盗賊(建文社)と訳註書が出ている、その後も色々の訳註者が色々の出版社から短編の作あるいは数作の訳註書が刊行している。

大正・昭和戦前・戦中期

短編集として原書の一冊をまとめて紹介したものは、大正4年(1915年)11月の探偵王・蛇石博士矢野虹城訳が嚆矢であるが、これは翻訳というより翻案というべきものである。その後、大正5年(1916年)には、加藤朝鳥訳シャーロック・ホルムス第一編から第三編で冒険の諸作がすべて訳されている。大正12年から刊行された紅玉社の万国怪奇探偵叢書には、深紅の一糸(緋色の研究)、ホルムスの思い出、四つの暗号(四つの署名)、地獄の手(恐怖の谷)、ホルムスの再生(帰還)、食堂の殺人(最後の挨拶)と刊行されているが、短編集の訳は全編の訳ではなく割愛された作もある。紅玉社はその後改めて、紅玉社英文全訳叢書としてメモアズ・オブ・シャロック・ホルムス、リタアン・オブ・シャロック・ホルムス、アドベンチャアズ・オブ・シャーロック・ホルムス、サイン・オブ・フヲア、スタデイ・イン・スカアレットを刊行している、書名はすべて原題のカタカナ書きだが内容は訳書である。

昭和5年に平凡社世界探偵小説全集の中の第1巻から第6巻として江戸川乱歩が恐怖の谷・妖犬シャーロック・ホームズの冒険を、三上於莵吉がシャーロック・ホームズの記憶シャーロック・ホームズの帰還を、東健而が或るグロテスクを、延原謙がシャーロック・ホームズの事件簿を担当している。昭和11年13年には岩波文庫で菊池武一訳シャーロック・ホームズの冒険ホームズの冒険、シャーロック・ホームズの回想ホームズの回想、シャーロック・ホームズの帰還ホームズの帰還が刊行された。平凡社版の短編集には、原書にありながら訳されていない作があるし、訳者として名前をあげている人が必ずしも自身で訳したわけではなく、乱歩などすべて代訳であると後年自身で述懐している。また、岩波文庫のものもやはり作品の選択が行われている。

全作品が原書に従って訳出されたのは、昭和6年(1931年)から昭和8年にかけて刊行された改造社版世界文学全集・ドイル全集(全8巻)が最初である。

余談ながら、このときシャーロック・ホームズの事件簿の訳出について原著者の許可をとったために翻訳権が成立し、ホームズもののうちこの一冊のみ訳書の刊行できる出版社が長く限られていた。

また、延原謙は大正末期からドイル作品を訳し、昭和6年にはドイル全集が刊行開始されている。(訳者の一人)

近年のシリーズ出版
新潮文庫版

訳者 - 延原謙、全10巻 (1990年代の改版にあたり、嗣子の延原展が修正を加えた)

戦前からドイル翻訳を手がけていた延原が、戦後新たに取り組み、1951年月曜書房からシャーロック・ホームズ全集を刊行開始、翌年全13巻で完結、日本初の全60編の翻訳を個人全訳で成し遂げた。月曜書房版には求むる男が収載されているが、後にドイルの作ではない事がわかったので、現行の作品集では収録されていない。

新潮文庫では、全集完結の翌年1953年3月にシャーロック・ホームズの思い出より刊行が始まった。br53年にシャーロック・ホームズの冒険、同・帰還、同・事件簿の各短編集、緋色の研究、恐怖の谷、四つの署名の各長編を、54年にバスカヴィル家の犬を、55年にシャーロック・ホームズの最後の挨拶を刊行した。brなお新潮文庫版は、ページ数制約のため短編集から計8編が割愛されており、55年9月に、その8編を収録した日本独自の短編集シャーロック・ホームズの叡智を刊行し、日本初の文庫版ホームズ全集全10巻が完成した。なお、文庫以外にも延原訳で別に新潮社から全集も刊行していた。

前史でも述べたが、延原は戦前からドイル作品の主要な訳者で、訳著は戦前、すでに一部文庫化されていた。br延原は更に文庫版全集完結後、ホームズ作品以外のドイル作品を翻訳し、57年からドイル傑作集を刊行。58年60年61年までに全7集の傑作集を訳した。また65年にわが思い出と冒険コナン・ドイル自伝を訳している(1994年に限定復刊)。br新潮文庫では、延原による戦前からのドイル翻訳の集成として、ドイル作品群が揃えられていたが、ホームズ作品とドイル傑作集(7巻中の3巻の全20短編)以外は、年を経て品切となった。

1977年の延原の没後も、順調に版を重ねていたが、90年代にリニューアル(展による訳文の修正・改版、カバーデザイン変更)した。またホームズ作品集以外のドイル傑作集(全3巻)も、200607年に改版、新デザインカバーとなり、重版されている。

なお、この新潮文庫版以降に刊行された文庫版全集は、すべてオリジナル通りの短編集5冊、長編4冊の全9巻で刊行したが、新潮版は改版再編後も叡智を含む全10巻構成のままである。

ハヤカワ文庫版

訳者 大久保康雄、全9巻。早川書房

最初は、新書判のハヤカワ・ポケット・ミステリハヤカワ・ミステリ(通称ポケット・ミステリ、ポケミス)シリーズで、1958年9月に、著名な英米文学翻訳家の大久保訳によりシャーロック・ホームズの事件簿を刊行した。翌年に同シリーズで、最後の挨拶を、その次が63年で同・復活が刊行された。brその後しばらく訳書は出されず、シリーズは3作で打ち止めと見られたが、第4作は18年ぶりとなる81年に同・冒険を、同年に同・回想も出版され、長編は83年に緋色の研究と四つの署名が、84年にバスカヴィル家の犬、85年8月に恐怖の谷を刊行、シリーズ発売開始以来約27年をかけて全訳が完結した。

刊行が再開された1981年にハヤカワ文庫ハヤカワ・ミステリ文庫での刊行も始まり、6月の冒険を皮切りに、同年中に回想、復活、最後の挨拶を再刊行した。うち復活最後の挨拶事件簿は文庫用に新たに訳しなおしたものである。83年に緋色の研究、四つの署名、84年バスカヴィル家の犬、85年恐怖の谷が再刊行。著作権関係で、文庫版では未刊行だった事件簿も、開始以来10年目の91年に再刊行。創元推理文庫版と同時に、新たな文庫版全集が完結した。その後冒険は改版され(上下)二冊本となっている。brかなりの年月をかけ完結したハヤカワ版全集だが、ポケミス版は全点品切、文庫版も半数以上が品切(2010年現在)になっている。

ホームズ作品以外のドイル作品では、新書判のハヤカワSFシリーズで、1962年に新庄哲夫訳でロスト・ワールド、63年にマラコット海淵(斉藤伯好訳)が出ており、1996年にハヤカワSF文庫で、加島祥造新訳で失われた世界失われた世界 ロスト・ワールドが刊行されたが、現在はいずれも品切。

関連書籍に、大久保康雄訳でジョン・ディクスン・カーによるドイル伝コナン・ドイルが、はじめ単行本で刊行され後にポケミスシリーズ唯一の伝記として出ていたが、こちらも現在紙書籍では入手困難で、電子書籍のみでの販売である。

創元推理文庫版

訳者旧版阿部知二 全9巻。深町真理子訳で新訳版が刊行(完結)。

深町訳
シャーロック・ホームズの事件簿 19915
シャーロック・ホームズの冒険 20102

シャーロック・ホームズの思い出回想のシャーロック・ホームズ 20107

緋色の研究 201011
四つの署名四人の署名 20117
シャーロック・ホームズの復活 20126
バスカヴィル家の犬 20132
シャーロック・ホームズ最後の挨拶 20148
恐怖の谷 20159

阿部訳シャーロック・ホームズの冒険回想のシャーロック・ホームズシャーロック・ホームズの生還シャーロック・ホームズの最後のあいさつ緋色の研究四人の署名恐怖の谷バスカヴィル家の犬(改訳のためすべて紙書籍では絶版、事件簿は阿部訳はなく当初から深町訳)

他の訳者でドイル傑作集全5巻と、冒険小説勇将ジェラール、SF小説等が計全10巻ある。一部品切中。

また深町訳で、ジュリアン・シモンズコナン・ドイルがあるが、品切。

講談社版(シャーロック・ホームズ大全)

訳者 - 鮎川信夫。講談社文庫(全7冊)を元にしている

シリーズ全60話のうち47話を1冊に収録。有名なシドニー・パジェットによる挿絵200点を掲載。小林司 精神医学者小林司、東山あかねによる解説つき。鮎川が急逝する直前の1986年9月に刊行。品切。

また90年代に講談社インターナショナルで原書シャーロック・ホームズ全集全14巻を刊行していた。全点品切。

ちくま文庫版(詳注版シャーロック・ホームズ全集)

監修・訳 - 小池滋で、他に高山宏、中野康司等が訳した、全10巻別巻

別巻は北原尚彦編シャーロック・ホームズ事典 199798年、全巻品切。

全作品を年代順に再編成(グロリア・スコット号事件最後の挨拶)。ウィリアム・ベアリンググールドによる詳解な解説と注釈を収める。元版は東京図書全21巻、1982-83年。別巻はちくま文庫オリジナル編集。

 

河出書房新社版(シャーロック・ホームズ全集)

訳者 - 小林司 精神医学者小林司、東山あかね 全9巻、19992002年、一部品切れ。原典はオックスフォード大学出版局版で注釈・解説も訳し、さらに初版本シドニー・パジェットの挿絵全点を入れた大著である。その後、全巻、河出文庫に収録された、文庫化する際に注釈・解説の一部を簡略化している。

小林・東山は夫婦で、日本シャーロック・ホームズ・クラブを主宰している。編著シャーロック・ホームズ大事典(東京堂出版、2001年)を刊行し、約30年間でホームズ関連著作を(共編著・訳書・児童書・再刊も入れると)七十冊以上刊行している。近刊はガイドブック再刊でシャーロック・ホームズの謎を解く(宝島社文庫、2009年6月)

なお河出では、小林・東山訳・著は、図説シャーロック・ホームズ(増訂版ふくろうの本、2005年)や、シャーロック・ホームズの推理博物館(河出文庫、2001年)、ウィリアム・ベアリンググールドローゼンバークシャーロック・ホームズ ガス灯に浮かぶその生涯(河出文庫、1987年)他多数があり、小林司ら以外も入れると20数冊を刊行しているが、約半数が品切である。

光文社文庫版(新訳シャーロック・ホームズ全集)

訳者 - 日暮雅通、全9巻

2006年1月から2008年1月に刊行された文庫の新訳版。

日暮雅通は、ジャック・トレイシーシャーロック・ホームズ大百科事典(河出書房新社、2002年)や、大著の伝記で、ダニエル・スタシャワーコナン・ドイル伝(東洋書林、2010年刊)を訳出している。また、ホームズが主人公になった小説作品を主に、他にガイダンスや事典など、数十冊の関連本を訳している。

光文社文庫版の前に児童書の講談社の青い鳥文庫に全作品を日暮まさみち訳として全16分冊で刊行している。児童向けの全作品の訳と成人向けの全作品の訳を両方行った初めての訳者である。

ホームズシリーズから生まれたミステリ用語

ワトスン役

探偵の相棒や助手を勤め、一連の活動を記録する人物。

赤毛トリック

赤毛組合に由来。ミスディレクション、はぐらかし、の一種。ドイル自身もいくつかの同工異曲作をものしているほか、鮎川哲也島田荘司に同趣向の作品がある。

鳴かなかった犬の推理

白銀号事件に由来。事件当夜の犬のとても奇妙行動からホームズは犯人を特定した。転じて一見何の不自然もないことが、実はとても奇妙であること。時に誤解されるが、あの夜犬は何もしなかったはホームズの台詞ではない。S・S・ヴァンダインが推理小説の書き手に示したヴァン・ダインの二十則(1928年)においては、当時においてすでに陳腐化した手法の一つとして掲げられており、一種の禁じ手となっている。

バールストン・ギャンビット

恐怖の谷の舞台となった邸の名に由来。トリックの概要自体は、ディケンズらに先駆がある。現実の捜査技術の発達で次第に姿を消した。

ソア橋のトリック

ソア橋ソア橋のなぞに由来。S・S・ヴァンダイン、横溝正史らが後に同様のトリックを盛り込んだ作品を著している。また、ドイルの遺品がオークションにかけられようとした時、殺人事件が起こるが捜査は難航し迷宮入りと思われた。しかし、このトリックを利用して英国から流出するのを阻止しようとした自殺ではないかと警察に助言が齎されたことにより、この事件は殺人事件を偽装した自殺だと判明した。

脚注
脚注ヘルプ
div classreferences-smallreferences div
シャーロック・ホームズシリーズ
DEFAULTSORTしやあろつくほおむすしりいす
Categoryシャーロック・ホームズ
Categoryミステリ
Category推理小説