サイトメガロウイルス

生物分類表
色 violet

名称 サイトメガロウイルス

画像 FileCytomegalovirus 01jpg250px

画像キャプション 感染細胞(中央)には特徴的な核内封入体が見られる。

群 第1群(2本鎖DNA)

ヘルペスウイルス目br wHerpesviralesHerpesvirales

ヘルペスウイルス科br wHerpesviridaeHerpesviridae

亜科 ベータヘルペスウイルス亜科br wBetaherpesvirinaeBetaherpesvirinae

サイトメガロウイルス

学名 Cytomegalovirus
タイプ種 wHuman herpesvirus 5Human herpesvirus 5
FileCMVschemasvgthumbright250px

サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus CMV)は、宿主細胞の核内に光学顕微鏡下で観察可能なフクロウの目owl eye様の特徴的な封入体を形成することを特徴とするヘルペスウイルスの総称である。ウイルスの分類上はサイトメガロウイルス属とし、この場合ヒトを含む霊長類を宿主とするものに限るが、総称としては近縁で齧歯類を宿主とするマウスサイトメガロウイルス(MCMV ムロメガロウイルス属 wMuromegalovirusMuromegalovirus)も含める。ヒトに感染するのはヒトサイトメガロウイルス(HCMV Human herpesvirus 5 HHV-5)で、これはヒト以外の動物には感染しない。

特徴

DNAウイルスのヘルペスウイルス科に属し、ゲノムの大きさは、直径約180nm、230kbp からなる2本鎖DNA ウイルスで大型のDNAウイルスであるヘルペスウイルスの中でも最大級である。感染した細胞の核内で増殖するとき、光学顕微鏡下で観察可能なフクロウの目owl eye様の特徴的な核内封入体を形成する。

1990年には Chee らrefChee MS et al Analysis of the protein coding content of the sequence of human cytomegalovirus strain AD169 Curr Top Microbiol Immunol 1990 154 125170 DOI101007978-3-642-74980-36refによってHCMVの全塩基配列が決定されている。

疫学

日本では、成人期での抗体保有率は60 - 90と高くref namemerckcmvhttpmerckmanualsjphome感染症ウイルス感染症サイトメガロウイルス(cmv)感染症html サイトメガロウイルス感染症 メルクマニュアルref、多くの人が幼児期に不顕性感染していると言われている。感染者は数ヶ月間に渡りウイルスを母乳、尿、唾液中に排出するref namemerckcmv 。なお、日本では1990年代以降妊娠可能年代の女性の抗体保有率が低下しており、2000年代には70まで低下しているとされているrefPDFlinkhttpwwwshimanemedorjpmedicinecpluginpluginattachdownloadpvol324filenameigaku32043135pdf 泉信夫、経胎盤伝播率からみた先天性サイトメガロウイルス感染児数の推計 島根医学 Vol32 No4201212ref。そのため、先天性感染や周産期感染による新生児サイトメガロウイルス感染数の増加が懸念されているref nameh050507PDFlinkhttpwwwaiikuorjpdochoukokuh05h050507pdf 干場勉、矢吹朗彦、妊婦のサイトメガロウイルスの抗体保有率の変遷と初感染 厚生省心身障害研究母子感染防止に関する研究 平成5年度研究報告書 53-55 1994ref。

有効なワクチン開発されていないref nameh050507 。

感染症

サイトメガロウイルスによる感染症は、幼児期の初期感染と免疫抑制状態での再活性化することで様々な病態を起こす。通常は、幼児期に何の病態も示さない不顕感染で終わり潜伏感染のまま推移する。しかし、免疫系正常であっても、肝炎、伝染性単核症様の症状、ごく希に胃腸炎refhttpswwwjstagejstgojparticlenisshoshi104910491377article-charja 白上洋平、後藤尚絵、西脇伸二ほか、健常成人に発症したサイトメガロウイルス胃十二指腸炎の1例 日本消化器病学会雑誌 Vol104 2007 No9 P1377-1382 DOI1011405nisshoshi1041377refを呈する事があるref nameidsc0315httpidscnihgojpidwrkansenk03k0315html サイトメガロウイルス感染症 国立感染症研究所refが、先天性感染以外では、聴覚神経、視覚神経への障害リスクは低いref nameh050507 。

主な感染経路は、

体液、分泌物との接触。- 非性的接触、性的接触。

胎内感染 - 新生児に先天性の感染症を生じる。

輸血、臓器移植 - 白血球内に感染したサイトメガロウイルスが感染し、2 - 4週間後に発熱、まれに肝炎を発症することもあるrefhttpdoiorg102957kanzo37549 金政秀俊、太田正治、小林紀明ほか、健常成人に発症したサイトメガロウイルス肝炎症例の検討 EBウイルス肝炎との比較を含めて 肝臓 Vol37 1996 No10 P549-555 DOI102957kanzo37549ref。また、免疫抑制療法中に生じた腸炎や大腸穿孔refhttpdoiorg1011231jaem341369 渋谷雅常、前田清、永原央ほか、免疫抑制療法中に発症したサイトメガロウイルス感染による大腸穿孔の1例 日本腹部救急医学会雑誌 Vol34 2014 No7 p1369-1373 DOI1011231jaem341369refが報告されている。

臨床像
先天性感染
先天性サイトメガロウイルスCMV感染症

感染歴を有しないCMV抗体が陰性の妊婦のうち、1 - 2が妊娠中に初感染をし、感染妊婦の約40が胎児感染に至る。胎児感染例の20は症候性であるが、80は無症候性の先天性感染であるref nameh050507 。症候性の感染児は新生児の約01とされref nameh050507 、妊婦が妊娠初期にサイトメガロウイルスに初感染すると、胎児に移行感染し、流産死産、新生児の死亡30refhttpmerckmanualjpmmpejsec19ch279ch279bhtml 先天性および周産期サイトメガロウイルス感染症 メルクマニュアルrefの原因となることがあるほか、難聴refhttpdoiorg1011374shonijibi3270 有本友季子、仲野敦子、工藤典代、原著音声言語の退行を呈した先天性サイトメガロウイルス感染症による両側高度難聴の一小児例 小児耳鼻咽喉科 Vol32 2011 No1 p70-73 DOI1011374shonijibi3270ref、小頭症、頭蓋内石灰化等をきたすことが多い。先天性巨細胞封入体症とも呼ばれる。TORCH症候群の1つ。なお、無症候性の先天性感染児のうち何らかの障害を発症するのは10 - 15とされているrefPDFlinkhttpwwwmedkobe-uacjpcmvpdfpnf3pdf サイトメガロウイルス妊娠管理マニュアル 厚生労働科学班研究 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業 2014年11月1日ref。

ウイルス培養によりトキソプラズマ症風疹梅毒などの他の先天性感染症と鑑別の必要がある。

後天性感染

主症状は、発熱、肝機能異常、頚部リンパ節腫脹、肝脾腫などで、急性熱性疾患としては CMV肝炎、伝染性単核球増加症と似た非定型リンパ球増加症。

サイトメガロウイルス網膜炎

網膜出血等を生じるrefhttpdoiorg1011391aidsr199964 山本成径、CMV感染症-眼科 日本エイズ学会誌 Vol6 2004 No1 P4-5 DOI1011391aidsr199964refrefhttpdoiorg1011412jjph198716312 浦上知子、西内律雄、小田慈ほか、急性リンパ性白血病の維持療法中に合併したサイトメガロウイルス網膜炎の1例 日本小児血液学会雑誌 Vol16 2002 No5 P312-316 DOI1011412jjph198716312ref。

サイトメガロウイルス肺炎

化学療法後や後天性免疫不全症候群などの免疫力低下している状態に引き起こるrefhttpdoiorg1011391aidsr199961 味澤篤、HAART時代の日和見感染症 日本エイズ学会誌 Vol6 2004 No1 P1 DOI1011391aidsr199961ref。後天性免疫不全症候群患者の主要死因である。

サイトメガロウイルス髄膜炎

化学療法後や後天性免疫不全症候群などの免疫力低下している状態に引き起こる。

サイトメガロウイルス腸炎

潰瘍性大腸炎等のステロイド治療中に起こるrefhttpdoiorg103919jjsa723089 高橋佳史、大森浩志、小池誠ほか、ステロイド治療中に穿孔性サイトメガロウイルス腸炎を繰り返した1例 日本臨床外科学会雑誌 Vol72 2011 No12 p3089-3093 DOI103919jjsa723089ref。

検査
検査法は主に以下が用いられる。
抗体検査

CMV-IgG既感染者で陽性を示す。日本では成人の90以上が陽性とされるが、陽性率は低下している。

CMV-IgM初期感染・再賦活時に上昇を示す

抗原検査

C7-HRPCMVpp65抗原をペルオキシダーゼ標識ヒトモノクローナル抗体染色し、鏡検下に細胞質が栓塞された好中球数を検索評価していく。陽性細胞数好中球10万個

C10C11CMVp65抗原のモノクローナル抗体とアルカリホスファターゼ標識2次抗体で染色し、鏡検下に細胞質が栓塞された好中球数を検索し評価していく

ウイルス検査

CMV-DNAポリメラーゼ連鎖反応PCR法にてウイルス量を直接測定する

治療

基本的に、初期感染時と再賦活時による感染活動期に治療適応となる。重症の場合は下記例の抗ウイルス薬を用いる。また、先天性感染感染児に対する抗ウイルス薬投与は難聴の改善効果が認められている。

ガンシクロビル Ganciclovir
点滴製剤
バルガンシクロビル Valganciclovir
経口内服製剤
ホスカルネット Foscarnet

点滴製剤。適応はサイトメガロウイルス網膜炎のみ

シドフォビル Cidofovir

耐性ウイルスの場合に投与。現在日本では未承認

出典

httpidscnihgojpidwrkansenk03k0315html サイトメガロウイルス感染症(国立感染症研究所 感染症情報センター)

田代隆良、後藤陽一郎、重野秀明 ほか、httpdoiorg1011150kansenshogakuzasshi1970631171 サイトメガロウイルス感染症の臨床病理学的研究 感染症学雑誌 Vol63 1989 No10 P1171-1177

参考文献

技術解説サイトメガロウイルス 共著本田順一、大泉耕太郎 ISSN 0485-1420

脚注
Reflist2
関連項目
ウイルス学
外部リンク

httpwwwmedkobe-uacjpcmv 先天性サイトメガロウイルス感染症対策のための妊婦教育の効果の検討、妊婦・新生児スクリーニング体制の構成及び感染新生児の発症リスク同定に関する研究 神戸大学医学部産科婦人科学教室

httptoxo-cmvorgindexhtml トーチの会先天性トキソプラズマサイトメガロウイルス感染症患者会

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